そりゃまあ僕も

20代会社員、男。音楽、カメラ、時事ネタなどの雑記日記です

とてもつらい

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「初めて村上春樹を読むならば、どれが良いか?」問題への答え

村上春樹のおすすめは?と聞かれて、頭を抱えてしまう村上主義者は多い。

村上春樹の作品は発表の時期によって文体が異なってるし、一部の短編やエッセイを除けば、おおよそ露骨に好き嫌いが別れる作品がほとんどだからだ。少なくとも、僕のこの語り口が合わない人には、まあまず向かないと思う。

本を勧めるのはアホらしい

そもそも人に本を勧める行為自体が、僕たちの世界において最も無駄な行為の一つだ。
他人に本を勧められて、本当に読む人は少ない。
だいいちオススメの本なんて世間話の延長に過ぎない。かといって面接で真剣に質問なんてすれば、思想・信条の差別に当たり得る。
軽い気持ちで話題にすれば会話の浪費に過ぎないし、かといって真面目に扱うには少々めんどくさい。それがオススメの本に関する質問である。

だから、よほど信頼できる人や気心の知れた人は別として、人前で本について話したくない。

酔っ払って仕事を語るオッさんのような、めんどくさい人間になっちゃうからだ。この日記を読めばわかるように。

 

もっとも、率先して話題に挙げることこそ抵抗があれど、人に本を勧めるのも、勧められるのも大好きだ(読まないけど)。
なぜかというと、どんな本にも出会いがあって、相手がそれを勧める以上、そこにはその人と本とのストーリーや想いがあるからだ。
どんな本であっても、僕たちは手を取るべくして手に取るし、縁がなければ手を取らない。手に取られた本の何冊かは、運が良ければページをめくられるだろう。
僕がオススメの本を話すことで、誰かとその本との出会いのキッカケを作るかもしれない。ほんのわずかな可能性でも、そんな素敵な機会に携われたらそれは素晴らしいことだ。

だから、僕は今日も人に村上春樹を勧めて「あっ、ガチの人だ、めんどくさいな」と思われてしまう。

で、初めての村上春樹のオススメってなんだ

さて、初めて村上春樹を読む人には何を勧めれば良いだろうか。
僕が真っ先に挙げたい一冊は『走ることについて語るときに僕の語ること』である。

 

走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)

走ることについて語るときに僕の語ること (文春文庫)

 

 



小説では無く、村上春樹が自身の作家経歴と趣味のランニングについて語ったエッセイだ。

この本はなんと言ってもコスパが良い。どの古本屋にもどの本屋にも売っていて、内容が濃い。

僕の持論だが、初めての一冊はコスパが高ければ高いほどいい。
コスパが高い一冊とは何か。
僕は4つの要素からなる作品だと考える。即ち、

  1. その作者の作品の性質が俯瞰できて、
  2. 作品自体の知名度があり、
  3. 狂信的なファンからも支持されていて、
  4. 興味が無くても暇つぶしくらいにはなる内容

の作品だ。


早い話が「あー、村上春樹ね、あの一冊しか読んだこと無いわw ○○っていうタイトルの〜」と知ったかぶりが出来て、
ファンもにわかも一般層も、タイトルを聞いてそこそこ納得できる作品が適当だと思う。
僕が思うこの四つの条件を満たした村上春樹の作品、それが『走ることについて語る時に僕の語ること』である。

この作品の良いところは、「村上春樹がどんな人物か?」を知ることができる点にある。
とんな経緯で作家になり、どんな生活をして、どんなことをしているのか?そういう人となりが分かりやすい。
また、村上春樹作品に特有の「やれやれ感」がない。何しろエッセイだから、小説そのものとは肌触りが違う。
人物像を知るためのエッセイならば最新作である『職業としての小説家』を連想する人もいるけれど、こちらは露骨に文体を変えているからオススメできない。雑誌の連載ということもあり、全編が丁寧語で書かれていてあまりにも余所行きの文章になっている。
それに比べると、この『走ることについて語るときに僕の語ること』は、比較的村上春樹「らしい」一人称のくだけた文章で書かれている。
内容も、『村上朝日堂』シリーズほどゆるくもないし、『やがて哀しき外国語』ほどカッコつけているわけでもない。
予備知識も必要ない。彼の長編小説のタイトルを何一つ知らなくても全く問題ない。
1980年代、30歳で小説を書き始め、同時にランナーにもなった1人の小説家の半生を知るにはうってつけのエッセイだ。

ただ、この本を読むとなんだか無性に体を動かしたくなってくる。
僕なんかジョギングシューズを買ってしまった。年に数回も走らないんだけども…
そういう意味じゃある意味コスパが悪いかもしれない。
ただ、それでも村上春樹を何か一冊読むなら、この本がオススメです。本当に。

 

 

話を逸らすための一冊

最後に、この本を人に勧める利点について。
この本は村上春樹が「走ること」について語った本である。
そういう趣旨で誰かにこの本を勧めると、
「そういえば最近運動不足でジムに通い始めてさ〜」と言った具合に、話題を本から逸らすことができる。

最初にうだうだと愚痴ったように、本の話題なんて人前でするモノではない。

特に小説なんて趣味や妄想のクセがモロバレになりそうだから人に話すなんて恥ずかしくて仕方ない。

だからこそ、初めての村上春樹を勧めるときはエッセイを勧める。

(初めて読む小説家の)オススメの小説を知りたがる気持ちに、肩透かしを食らわせる、この日記こそ、まさに話題逸らしである。
話をはぐらかすのにも便利なので、ぜひぜひ読んでみてください。